ワンピース歌舞伎

が再演ときいて、わああああい みんなワンピース歌舞伎みて!!! と思って、

 そうだ、ワンピース歌舞伎に出る役者さんを紹介しよう、そしたら興味持ってくれる人いるかも。

 と書き始めたのですが、ルフィ、ゾロ、サンジではやくも力尽きてしまいました。でもせっかく書いたので見て。敬称略

市川猿之助(ルフィ/ハンコック役)
 澤瀉屋を背負って立つ四代目。前回公演時、ワンピースは読了していないと言っていて、脚本演出のワンピース像に従って演じると言っていました。よって、原作に似せようという努力はさほど感じないんですが、原作の味は出してると思います。
 演技力、運動能力、踊り、すべてずば抜けている座頭。

坂東巳之助(ゾロ/ボン・クレー/スクアード役) 
 ワンピース歌舞伎はこの人のためにあると言っても過言ではない。
 坂東三津五郎(10)の長男、日本舞踊坂東流家元。
 歌舞伎は独特の発声をすることもあって、他の役者はアニメのワンピースの声に近づけようという努力はあんまりしていないのですが、彼は完全に原作を、アニメを再現しようとしています。
 ゾロ役中井和哉さんの声とみっくんの地声は全然違うんですけど、完全にゾロの声です。化粧も気合入ってます(歌舞伎役者はキホン自分で化粧します)。
 ゾロも最高ですが、なんといってもボン・クレー。ボン・クレーが三次元になって立っている…。
 やばい。ボン・クレーの魅力を正しく理解し、完全にボン・クレーになってるみっくん。
 坂東流家元のオカマ六方が見られるのはワンピース歌舞伎だけ!!
 最近更新してないけど、みっくんのブログは彼の舞台を見て、彼のことがちょっとでも好きになってから見るようにしていただけるとうれしいです…

中村隼人(サンジ/イナズマ役)
 梨園のプリンス(異論は認めるけど多分さほど出ない)。
 ちょっとありえないくらいにお顔が整っていて、客あしらいもイケメンで、アイドルかな? 写真集やカレンダーも出してるし、アイドルだな??
 幅広い年齢層の女性ファンを魅了する紳士な態度、地でサンジなのでは?
 でも男性にもジェントルなのでサンジではなかった……。
 舞台にも真面目に取り組む優等生(私生活は知らない)。サンジ役もきっちり、しっかり演じています。
 あと、これをきっかけにサンジ役平田広明さんと大変仲良くなって、平田さんを大向こうデビューさせてくれました! 隼人くんえらい!!! 平田さんのことも先輩役者さんとしてすごく立ててて、隼人くんまじ隼人くん!!!

 ワンピース歌舞伎は本水(本当の水)を死ぬほど使って滝の中で立ち回ったり(まじで隼人溺れるんじゃないかと結構心配した)、(前回と一緒なら)斜め宙乗りという画期的な演出があったり、早変わりもあるし、澤瀉屋らしくケレンもたっぷりでとても楽しいですぞ!
 歌舞伎要素も十分楽しめますぞ! ぜひ!!!

「日本人でよかった」神社本庁

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170511/k10010976941000.html

 「日本人でよかった」という神社本庁のポスターの問題のニュースをみて、日本人でよかったかどうか、自問してみたのだが、そもそも神社本庁の言う「日本人」の定義というのが分からないのでどうにも答えようがないのであった。
 
 アメリカ人の言う「アメリカ人」は(多くの場合)「アメリカ国籍の人」を指すと解釈して様々なアメリカ映画や文学を摂取してきたのだけど、いわゆる?日本人の言う「日本人」は、どうも国籍が日本である人を指さないように思う。
 両親が在日韓国・朝鮮人日本国籍の人を日本人と呼ぶことにすごく抵抗があるらしい人は結構私の周りにも多いし、就業(スポーツ選手など)や結婚で日本国籍を取得した海外出身者を「日本人」と神社本庁が認識しているのかちょっと疑問を持つ。
 私自身にしても、これらの人を「日本人」と認めている。と言いたいのだがそうとも言いがたく、認めていない、とも言い切れず、なんとも宙ぶらりんなきもちになる。
 「日本人でよかった」と言われたときに感じる不快感とか不安感はここに根ざしていると思う。日本人とはなにか。私は日本人である、と主張する人を、私はちゃんと日本人として扱っているのか、そこに私の差別意識はないのか、っていうことを突きつけられた感じがするのだ。

 それと、根本的に「日本人でよかった」という言は、「日本人じゃないと悪い」と捉えられるという想像力を持つべきだった。
「男の子でよかった」「ヘテロでよかった」「白人でよかった」「右利きでよかった」
 自分ではどうしようもない属性について、「この属性でよかった」ということは、まあ、基本的に差別発言である。

 「日本人」を仮に日本国籍の人と定義するならば、「日本人でよかった」って言われた場合の私の答えは、「日本人はすてきだけど、多分日本人じゃなくてもすてきだと思う」。

はじめての歌舞伎観劇

 歌舞伎興味あるけど~と言われることが結構あるので「全然怖くないよ!」ていうのを伝えたくて、はじめての歌舞伎をサポートできたらいいなとこの文を書いています。

1.どんな服を着て行ったらいいの?
 「声優さんの握手会に行くときの服装」くらいだと、いい席でも堂々座れると思います。ただ、極論を言うと、ぶっちゃけどんな服装でも、回りの迷惑になる(視界をさえぎる、不潔など)ものでなければ全然OKです。気負わなくて大丈夫。

2.音声ガイドっていうヤツは借りた方がいいの?
 これは「好みによる」と答えさせてください。音声ガイドは物語の解説や豆知識など豊富な情報が演技の邪魔にならないように聞けるので便利なものです。ただ、歌舞伎は役者さんの演技のほかに義太夫や清元、鳴り物の演奏があり、これらは音楽です。この音楽を味わいたい人には音声ガイドは邪魔になります。

3.予習はしていった方がいい?
 江戸時代が舞台のもの(世話物)はセリフも普通に聞き取れると思うので予習しなくても大丈夫です。が、時代物(江戸時代からみて昔の時代が舞台のもの、源平・戦国など)は台詞回しが独特で聞き取りづらいと思うので、ネットとかであらすじは読んでいったほうが吉。

4.上演時間はどれくらい?
 普通は4時間くらいあります。4月歌舞伎座昼の部は4時間50分もあります。なので、お弁当が必須です! 劇場でも売ってますが持ち込めます。コンビニのサンドイッチ食べてる人も結構います。
 歌舞伎鑑賞教室や、一部の花形歌舞伎、新作歌舞伎は上演時間が短く、お弁当いらない場合もあります。初日のちょっと前に上演時間が発表になるのでチェックするのが吉。

5.そんなに上演長いの? ヤだな…
 幕見席というものがあり、好きな一幕だけを見ることができます。当日券なので、当日劇場に行って買います。これも初日前に情報が出るので公式HPをチェックしてください。
 歌舞伎座の公演は必ず出ます。他の劇場はチケットの売れ行きによっては出ない時があります。まあ、最近だいたい出ます…。

 はじめて歌舞伎を見に行く人によくきかれることを簡単に書いてみました。
 また、オタク向けにもうちょっと突っ込んだ記事も時間がある時に書こうと思っています。

 この内容は基本、文楽も共通なので、文楽はじめて見に行く人の参考にもなるかな~と思います。

宗教都市天理へ行ってきた! その2

 楽しかった天理参考館を出ると、大きな道を隔ててすぐそこが天理教の神殿である。
oda_201703142332216cc.jpg どーん

 写真だとあんまりこのすごさが伝わらないんだけど、まず、すんごいでかい。写真の中に全容が納まらない。
oda_20170314233804510.jpg ともかく、でっかいんです!
 
 真ん中に「おぢば」という神様が人間を作ったとされる場所があって、それをぐるりと囲むように神殿が建てられています。
 この複雑な屋根の形、渡り廊下、欄間(?)のこまかい木とか、素晴らしい建築です。
 行った日は特になんでもない普通の日曜日だったのですが、神殿にはたくさんの人が来ていて、神殿に上がる下足のところには2,3人の天理教の法被を着た人たちが靴を片付けたり、人の整理をしたり、とてもにぎわっています。
 参拝者は、極普通のラフな格好をされている方が多いですが、その上に天理教の法被を羽織っている方がかなりの数いらっしゃいます。
 この天理教の法被、別に神殿周りだけでなく、天理市内のいたるところで着ているひとを見かけます。10代の若者からお年寄りまで、年齢層も幅広い。高校生カップルが法被を来てデートしている姿までみました。天理のまちで天理教はそのくらい身近な存在なのだなと思いました。
 この神殿は信者でなくとも拝観することが出来るのですが、なんか勇気がなくて入れませんでした。今度勇気が出たら中も拝見したく思います。

 特になんでもない日なのですが、神殿前には数軒の露店が出ています。それくらいの賑わいは常にあると言うことでしょうか、すごい。

 神殿から天理駅までは長い商店街になっています。まさに門前町といった感じ。
 奈良みやげを扱うお店が多く、県外からたくさんの信者が来るのだということが分かります。あと、呉服屋さんが結構多いですね。天理教関係の服を売っています。教服っていうのがデザインめっちゃかっこいいですね。おつとめ着は既製品もあるようですがあつらえたりもするようなので、呉服店の需要が結構あるみたいです。
 神具店も多い。これももちろん天理教の神具を売っています。さらに、天理教関連の書籍のみを扱う本屋もあります。一般書店でも店頭に天理教関連の本が平積みされています。
 もちろん、生活必需品を売るお店や、飲食店もありますが、総じて天理教関連のお店は多めで、非常に栄えている商店街と言えると思います。

 そして駅につきます。行きは近鉄で来たのですが帰りはJRに乗りました。
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天理教信者にとって、天理はかえるべき場所。おぢばがえりの季節にはすごい人数が天理に集まるそうです。
ここで注目すべきは、このポール広告は別に天理教が出してるんじゃなく、JR西日本さんが出してるところだと思う。すげえ

宗教都市天理へ行ってきた! その1

   天理市には、天理教の聖地があり、天理教の関連施設が立ち並ぶ、日本随一の宗教都市です。市の名前自体が宗教名から名付けられており、こういう都市は日本では天理市だけ!
 駅前の広場は絶賛工事中でした。多分、古墳を模したオブジェを作っている最中みたいです。
 この地域は古代豪族の物部氏の本拠地で、周辺には数多くの古墳があります。古代の道、「山辺の道」の中間地点でもあり、古くから栄えた地域です。

 ということで、まずは駅から約3㎞離れた石上神宮へ向かいまつ。私はバスで向かいましたが、バスの本数めっちゃ少ないので気をつけてください。
 バスは天理市の中心部を通っていくのですが、本当に天理教関連施設が多いです。特に神殿の偉容には圧倒されますが、これについてはあとで触れるので流しまして、バスは少し山を登り、石上神宮バス停につきます。
 と言っても、このバス停から石上神宮までは10分くらい坂を上ります。その途中にも天理教の施設があります(下)。詰所とは天理へ来る天理教信者のための宿泊施設だそうですが、一般の人も利用できるみたいですね。詰所は市内いたるところにあって、きれいな所もあれば、割と汚そうなところまでピンキリでした。
 天理教詰所 
 石上神宮物部氏氏神として有名ですね。古代史上重要な剣「七支刀」があったり、あの有名な刀「小狐丸」とされる刀のうち一振があったりします。
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 石上神宮は鶏がたくさんいることで有名ですが、ホームページをみる限り、どうやらここの神様の神使というわけではないようです。奉納品(奉納鶏)のようですね。石上神宮ページ
 
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 鎧櫃がありましたよ! 本物の鎧櫃をみるのははじめて見たので感動しました。思ってたより底が深いですね。コレくらいは必要なのか。ほほう。



 さて次は、石上神宮から歩いて天理参考館へ向かいます。この天理参考館はめずらしい考古学資料が多いというウワサをきいて、前から来てみたかったんです。
 天理教はこの天理参考館の所蔵品の他に、様々な稀覯本を所蔵しているのでも有名みたいですね。天理大付属天理図書館で広く一般に公開されています。
 石上神宮から左へ下っていくと、天理大学方面に出ます。グラウンドでは天理大野球部が練習していました。この中から未来のプロ野球選手が出るのかも…。
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 このあたりから建物はいわゆる「天理建築」の様式のものが続きます。紅殻色の窓枠、特徴的な反りのある屋根、あと基本的には高床なのかな? そしてなぜか建物の横にそびえる煙突。おそらくなにか宗教的意味づけがあったりするのでしょうがよく分かりません。建築物としてなかなか魅力的だと私は思うのですが、どうでしょうか。

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 天理大の施設を突っ切っていくと大通りに出ます。大通りの上に高床の要領でそびえ立つ建築。規模が違う。すごい…どういうこと? 
 詳しい施設配置はいまいちよく分からないんですが、天理参考館はおそらく天理教の主要施設群の一画にあると思われます。
 参考館は3階までで、1階が「世界の生活文化」、2階は「世界の生活文化」の中の日本関係、3階が考古美術です。
 参考館の入口に理念が掲げてあり、要約すると、世界に布教するためにはそれぞれの文化・宗教などを理解しないといけないみたいな感じでした。根本には布教の思想があるようですが、展示自体は一部を除いて天理教の色が全然ない、きわめて博物館らしい博物館です。
 むしろ、他の宗教に対する深い理解と尊重の姿勢は、公共博物館の上を行くかもしれません。1階は各地の文化・芸能・宗教儀式などについて展示されていますが、特に原住民や少数民族のくらしを紹介するのに熱心なように思います。多分得意分野は朝鮮半島と台湾、琉球よりはアイヌが得意そうです。アイヌの民具は種類・量ともに非常に多い。
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 「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」で日本でも(私の周りでは)話題になった台湾・布袋劇の展示もありました。
 
 2階の手前のスペースは、布教のためアメリカ大陸へ渡った天理教信者の方々についての展示があります。
 正直に言うと、こういう展示部分で「偉大なる~は」みたいな信者さんにしか分からない宗教文脈に触れられるのではないかとワクワクしていたのですが、解説文は非常に冷静で客観的、歴史学者の視点。
 天理教会と信者という関係だから収集できたのだろうな、という個人的なものも多くあって、豊富な資料が当時ブラジルへ渡った日本移民の生活を物語って大変興味深い。国内では他に類をみないコレクションではないかと思いました。

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ブラジルの天理教会から得た民具や資料で復元されたブラジルの日本移民の家
 内装も細かくレベル高いぞ。

 北アメリカへの移民についても、二次大戦中の苦難の歴史が、アメリカの天理教会の編纂と共に語られる。
 日本移民のことについて、全然知識がなかったので、大変興味深かったです。

 二階の主な展示は、日本の庶民の生活と文化を紹介するもの。所蔵品は価値の高い低いではなく、庶民の生活の歴史を残すことに重きが置かれている感じがして、とてもよい民俗展示。
 季節がらさまざまな時代のお雛様の展示があってとても面白かった。享保雛はやっぱりかっこいいなあ。
 それと、天理教の歴史に関わる資料ももちろん豊富なのだが、やはり扱われ方はあくまで歴史資料としての扱われ方だった。

 そしていよいよ三階の考古美術!!!!
 圧倒的である。大きく分けて日本・朝鮮・中国・オリエント文明の考古美術を収集している。まず三階入口ホールにて布留遺跡についての資料がある。天理市中心部はまるごとこの布留遺跡の上に立っているんだそうだ。もちろんこの天理参考館も布留遺跡の中に立っている。物部氏の支配地域で、かなり大きな遺跡のようです。古墳時代のものがたくさんみられますよ。
 展示室に入ると、いきなり縄文土器がある。東の人には分かってもらえないだろうけど、関西圏の博物館において縄文土器を拝めるというのは、僥倖である。縄文土器好きな私はこの時点で狂喜乱舞だ。
 そして中国の青銅器も状態のいいものがたくさんある!!(青銅器も好きなのである)
 あと、甲骨文字が彫られた骨がある! 実物初めてみた!!

 三彩陶については、素人目からみてもあきらかな優品が多く、熱心に収集されていたのではないだろうか。
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(写真)どう考えてもやばくない?? すごくない?

 オリエント文明は全然詳しくないんだけど、なんか国立博物館とかでしかみたことない雰囲気のすごそうなものがごろごろっとある。

 これ、多分めんどいから国宝にしてないだけで、ホントに国宝級の結構あるでしょ? たぶん。。。

 布教を目的として収集、研究された資料だが、参考館はあくまで博物館としての役割に徹しており、おそらく意識的に天理教という宗教色を排除している。もしかすると天理教に詳しい人からすると非常に天理教らしい部分があったりするのかもしれないけれど、少なくとも素人の博物館好きにすぎない私にとっては「めっちゃいい私立博物館~~。ほんとに割と博覧的~」という印象でした。

 このあと、神殿に向かい、商店街を散策するのですが力尽きたため一旦ここまで。
 
 

ボーカロイドオペラ「葵上」

 ボーカロイドにゃっぽんが期間限定復活したんで、その中でボーカロイドオペラ「葵上」について書いたのですが、外部からみれないみたいなので、自ブログに転載してみました。

ボーカロイドオペラ「葵上」のページ

 初音ミクが歌い、文楽人形が踊る。それがボーカロイドオペラ。

 ニコニコ動画にはまってたことのあるボカロクラスタなら、すごいうんうん、分かるってなるストーリー。だからすごく現代的なんだけど、すごいしっかり源氏物語の「葵上」をなぞってて、古典的でもあるの。

 光が最後まで出てこないんだけど、これは能の「葵上」が非常にミニマム(? なんか間違ってるかも)な表現をしていることを踏襲しているそうです。

 そして文楽人形。まずお衣装が文楽でよく見る江戸時代の服じゃなくって、未来的なようで、それでいて古代風でもあるような(奈良時代とかみたいな)不思議な感じ。

 人形の顔がぱっと一瞬で変わるのとかもすごいぴっくりするんだけど、これは元々ある技法らしい。けどその中に新しい工夫もあるらしくて文楽好きの方は感動されてました。

 あと、見よう見ようと思っていたのに最近までこの葵上をみなかったのは、やっぱり太夫・三味線の不在というのがあった。文楽は三業といって、「義太夫・三味線・人形」があって、はじめて成り立つものとされる。(しかも、伝統的には義太夫さんの方が人気があるものなのです)

 ここから私の勝手なイメージなんだけど、文楽ってアニメに似てるかなって思うんですよ。人間とは全然違うけれど、人間にとても似ているデフォルメされたもので物語をつむぎ、時に人間以上に人間らしい表現を可能にする演劇。そして人形師さんはアニメーターに近くて、義太夫さんが声優さんに近いのかなって。だから声優さんの方が人気あるけど、アニメーターさんだってすごいよねっていうところとか似てないですか?

 それはそれとして、義太夫が主役みたいな風潮もどこかにあるので、義太夫のない文楽なんて、、というのが私の中のどこかにあった。そう思ってる文楽ファンの方、きっといると思うけど、ホント騙されたと思って見てほしいこのボーカロイドオペラを…。

 もちろん、初音ミクに嶋太夫さんみたいな義太夫は語れない。でも、それはそれ、これはこれなんだと思います!

 音楽的には全く別物だけど、それぞれ違ってそれぞれいいんだよ! 新しいものの良さも古きものの良さもあるけど、それは比べられないものだと思う。

 これって、ボカロ黎明期にあった「人間の声が一番」論争と一緒なのかな。今もあるかな。ボカロ曲を歌い手さんの歌でしかきかない人とか。

 私はそういう人を「あーもったいない。鏡音のカツゼツの悪い歌が聞き取れるようになる快感を知らないなんて!」と思ってたはずなのに、

義太夫については同じこと思ってた!

頭固い! 猛省します!

 初音ミク美空ひばりに勝てないけど、美空ひばり初音ミクになれないんだよ!

ということばを「葵上」の登場人物ミドリに捧げたいと思います。

 あと、知識がなさすぎてうまく語れないのではしょったけど、

音楽も演出もめっちゃかっこいいから見て…

見てしか言えない…

 よく言われることだけど、ホントに文楽ボーカロイドはにてるな~て思った。

 人形に人間から離れた能力を与えながら、それこそが人間性を表現するみたいなものは日本人がとても好きな表現方法で、文楽にもボーカロイドにも根底に流れている思想なのかなって思う。

 

長くてまとまりのない文章読んでくれてありがとう。

人間は美しいということを思い出したければハバナに来ればいい ハバナ2日目後半

 ハバナの町を歩いていて気付くのは、小学校の多さ。数百メートルに一個くらいある。

 二歳までのお子様を預かる保育所もちらっとのぞかせてもらった。共産主義国キューバ、もちろん無料です。「平等な社会」「こどもの搾取を許さない」というマルクス主義の基本をしっかり守り、こういう制度は本当によく整えられている。

 歩き疲れたので一度ホテルに帰る。ホテルは高級住宅街にあるメモリーズミラマール。こぎれいな大型ホテル。

 旧市街までは距離があるのでシャトルバスが出ているので使ってみることにしたら、なんと定刻より2分早く出発した。びっくりした。10分前行動しておいてよかった!!

 基本的にキューバでは物事が時間通りにはじまることはない。絶対遅れてはじまる。ハバナ発の飛行機も運行会社によらず、時間通りには出発しないと思っておいたほうがいい。

 時間にきっちりした人は苛立つかもしれないが、何事も慣れである。このルーズさは、いい様にとらえると「融通が利く」ともいえるからだ。

 お子様が落ち着かなくてお母さんがもたついていても、障害者がいて移動に時間がかかっても、誰も苛立たないし、本人たちも焦ることなく自分のペースで事を進められる。だって、それがあってもなくても開始は遅れるんだから一緒なんである。だったらみんなハッピーにのんびり事を進めるほうがいい。

 あと、キューバの人はいついかなるときも、知り合いがいると話しかけないといけないらしい。仕事中だろうが移動中だろうが自分の後ろに列が出来ていようが関係ない。これはそういう風習だと思って諦めるしかない。なにかを買おうと店員に話しかけた瞬間、店員の知り合いが通りかかってしまったら、話が一段落するまで待つしかない。こんなことをしていたら、そりゃ何事も開始時間は遅れていく。

 逆にこちらの顔を覚えてもらうと、すれ違っただけでも熱烈に喜んでくれるので、これはこれでうれしいものである。

 そんなわけですっかり油断していた私はあやうくバスに乗り遅れるところだったのだ。危ない危ない。

 旧市街に到着し、革命博物館の外からグランマ号をのぞこうとしたが、よく見えなかった…(休館日だったのである)。

 10年前にはちゃんと中に入ってグランマ号を間近で見たのだが、想像以上に小さな船だった。

 革命博物館に行くと、戦争とは、どんな大義を掲げていても人を殺すという行為で、仲間も殺されるという行為なんだと思い知って、体が震えた。夢見がちにゲバラに憧れていた学生時代の私にとって、それはなかなかの衝撃だったように思う。

 しかしrevolucionそのもの全てを否定するわけにはいかないのも事実であって、バティスタ政権の下、栄養失調と衛生状態の悪さでバタバタ死んでいっていた子どもたちに清潔な制服を着せ、読み書きどころか大学まで無料で行ける道を子どもたちに開き、全ての国民を飢えさせないよう、治せる病気で死なせたりしないよう舵を切ってきたこの年月を否定は出来ない。

 さて、手持ちのCUC(外国人向け通貨)がなくなってきたので、オビスポ通りの両替所で両替した。キューバでは現在米ドルが基本使えないので(逆に10年前は外国人は米ドル払いが基本だった)、ユーロに次ぐ世界通貨として日本円の両替は比較的簡単だ(あとカナダドルも強い)。日本人的には大変うれしい。ありがとう米国(いつまで続くかわからんが)

 

 晩御飯にいい時間になってきたので、ラ・ボデギータへ。ここはヘミングウェイ行きつけの店、モヒート発祥の地として名高い。飯はややアメリカ寄りの味付けで、キューバにしては濃いめでおいしく食べれると思う、多分。あんまり量食べられないので、一皿をシェアすると言ったが、全然気にせず取り皿を用意してくれた。キューバのレストランは割とこういう感じだ。気がいい、というのもあるが、まあ、キューバ人は細かいことは気にしないのである。

 余談だが、ラテンアメリカの飲食店では食べ終わった後の皿を下げに来るのがめっちゃ早いが、これは多分、土地柄的に食べ残しを放置していると虫がたかるからだと思う。他意はないはず。ラテン系の常として、食後ダラダラおしゃべりするのは当たり前の行為なので、全部下げられたからと言って、早く帰らなきゃ! と思う必要はないみたい。

 ラ・ボデギータには常に楽団が入ってるのだが、ものすごいレベルが高い。ここに限らず、どこに行ってもハバナの観光地でやってるバンドはレベルがすごくたかくて本当にびっくりします。

ラ・ボデギータ2
ラ・ボデギータ2 posted by (C)つばな

ラ・ボデギータ1
ラ・ボデギータ1 posted by (C)つばな

 アメリカ人らしくないアメリカ人、ヘミングウェイキューバの土地と人々を愛し、革命後キューバに入国した際「我々キューバ人は勝つ!」とシュプレヒコールをあげたことで、キューバとさらに深くつながった。アメリカでさぞ生きにくかったろうなと思う。私のスキな作家の一人です。

 ここからタクシーに乗って、ベダド(新市街)地区のコッペリアへ。キューバ一有名なアイス屋さんだ。キューバは飯マズだが(ついにはっきり言った!)、アイスはうまい。激うまです。こっくりした深い味わい。砂糖も牛乳もいいからだろう。

 そうそう、キューバの食料は、農作物はすべて有機栽培、肉類は基本放し飼いなので、自然派の人には天国だと思う。遺伝子組み換えも農薬もブロイラー工場もなし! そのかわり、お肉は淡白っていうか、よく引き締まった、野生な味がする。でもこれが本来の肉の味なんだろうな、と思った。我々は漂白されたお肉を食べているようなものなのかもしれない。

 

 コッペリアの森とでもいえそうな公園みたいなところに、キューバ人向けと外国人向けの店舗が出ている。

 国内向けは5スクープくらいの量で出てきて味は選べないらしい。外国人用は好きな量選べて、味も選べる。値段は天と地ほど違う。守るべき国民と外国人とで値段設定が違うのは共産圏じゃなくてもタイとか行くとよくあることなので、これは慣れてもらうしかない。

 外国人向けは24時間営業。9時を過ぎていたので外国人向けのところで食べた。イチゴとなに味だったか忘れた。ちょっとめずらしい味をチョイスしたはず・・・。

 コッペリアのアイスは至高にうまい。

 コッペリアの前はホテル「キューバリブレ(自由のキューバ)」。ヒルトンホテルとしてオープンするはずだったが革命が起こり、フィデルたちに接収されたホテルである。

 その隣は映画館。今回はキューバ映画を上映していたが、十年前行ったときはハリウッド映画「デアデビル」を上映していた。日本映画がかかるときもあるそうな(ジブリとか)。

 そこから坂道を海側に歩く。夜になると、ハバナの人は家の外に出てくる。室内が暑いから。クーラーのついている家は少なく、ついていても動く家はもっと少ない。

 座るところがあって、しかも風通しのよい場所ををハバナ人はよく知っていて、そこには人が溢れている。

 そしてみんな携帯をいじっている。

 今までもやってる人はこっそりやっていたインターネットだが、ラウル政権になってWi-Fiが使えるようになりどこでもネットに繋げることができるようになったので、キューバ人はもう携帯に夢中だ。勤務中でも携帯いじりまくっているのである。オフモードの夜なんかいじりまくるに決まっている。

 地元の人が集まるレストランからは陽気な音楽が流れ出て、店員は踊りながら給仕する。これがハバナの町。

 そこから再度Hotel Nacionalへ至り、ちょっと休憩。

 ここから自分の泊まったホテルまでタクシー乗ったんだが、時間帯と場所柄からたまたま空いてたのか観光客用のアメ車タクシーに乗れた。

 キューバの風物詩クラシックアメ車は、10年前にはキューバ人用の乗り合いタクシー(コレクティーボ)には使われていたけど、観光客用タクシーには使われていなかった。なぜなら、あの古いアメ車たちは、新しい車が買えない人たちが仕方なしに修理に修理を重ねて大事に乗っている車だから。

 今も大半はそうなんだけど、観光客用にかっこよく整備したアメ車が一部、観光タクシーとして活躍している。アメ車オタクの観光客からの需要があるのだ。

 10年前に乗ったガタガタ揺れる現地人用のアメ車タクシーと違って、観光アメ車はシートもふかふかで乗り心地がよかった。

 ハバナの人は基本的に親日家である。基本的に、と書いたのはあんまり日本がどんな国かわかってないからだ。キューバには日本企業が進出していない。アメリカ様に気を使っているのだろうか、友好国の一つのはずなのに、ほかの国に比べると、ODAも控えめである。だからハバナの人の日本人イメージは観光客のイメージである。よく言われるのは「日本人シャイだね」。ハバナ人に比べれば世界中の人間がシャイなんじゃない? て思うけど、まあ、その中でも飛びぬけて日本人はシャイなんだろう。観光客なのに現地人に話しかけられてもあんまり喜ばない人種だから変に思われていると思う。(ハバナの人は知り合いだろうがそうじゃなかろうが話しかけてくるし、日本人めずらしいからお話したいのである)

 よく普及している車は中国のYutongです。安いってのもあるし、キューバの最大の貿易国ってのもあるだろう。続いてフォルクス・ワーゲン。Yutongほどでないが、結構多かった。そして高級車の定番はBMWとベンツ。一昔前はロシア車(プレジデンテ)が高級車だったらしいが、今やフィデルBMWに乗ってるらしい(タクシーの運ちゃん談)。

 電化製品はLGなど韓国系が強い。

 しかし、日本製神話はキューバにもあるようで、たまーにミツビシの車とかソニーの携帯とか使ってる人がいて、それはかっこいいことみたいだ。

 それと、キューバ人は親中国派でもある。ロシアとの関係が冷え込んだ後、経済的に下支えしてくれた中国に悪い印象を持っていない。極東の人間は全部同じ顔に見えるので「ニーハオ!」と声をかけられても怒ってはいけない。日本人です!と言ってあげてください。あまり中国人観光客はいないので、コニチワ!と声かけてくる人も多いけど。

 というか、キューバ人は「嫌いな国」というのは多分ないんだろうなと思う。あんなに色々あったアメリカさんでさえめっちゃウェルカムである。早くアメリカ人観光客来ないかなって今思ってる。旧宗主国のスペインにも、恨みつらみはない。めっちゃ仲良くやってる。

 全然ないわけではないのかもしれない。でもそれはそれ、今は今なんだろう。キューバ人は細かいことにいつまでもこだわっていないので、今仲良く出来るのなら仲良くするだけなのです。

 でも、アメリカ人観光客が来るようになったらこの町も変わるだろうな、と思うので(まずマクドナルドが出来るだけでもすごい変化ですから!)、今来られてよかったなって思った。

 10年でハバナもかわったな、という印象を受けたけれど、この町のおおらかさ、親しみやすさはそのままだった。

 それは元々この土地に生きる人が持っている性格なのかもしれないけれど、性別も、人種も、宗教も差別しない、そんな国を作ろうと努力してきて、そしてある程度成功したこの国が手に入れた性格なのかもしれないと思う。少なくとも子どもが履く靴さえなく破傷風でバンバン死んでいっていた時代はこうではなかったんじゃないかな。

 人間が美しいということを思い出したくなったらハバナに来ればいい。人間は優しく、どんな憎しみや怒りも乗り越えていける強さを持っていることをこの町は証明してくれる。