堺市図書館BL本問題―図書館のあり方を考える 追記あり

今更ですが一部で燃え上がっている図書館BL本問題について真剣に書いてみたいと思います。

経緯についてはこちら

http://www.city.sakai.osaka.jp/city/info/_shimin/data/5374.html

堺市図書館に多数のBL本が置かれていることについて市民の方が問い合わせしたことからはじまってます。

これをきっかけに図書館にBL本を入れるか否かという論争が勃発したわけです。

この問題にはいくつかの要素があると思います。まずBLが有害図書扱いされていない問題。レディースコミック同様、条例で取り締まられる有害図書からは今まで基本的に抜け落ちてきました。また、有害図書指定を受けても、一般書店では18禁コーナーに配置されないことが多い(18禁コーナーは男性向けイメージが強く女性客が利用しにくい)。これは問題だと思っています。

しかし、この一般書店での取り扱いと、図書館での取り扱いを並列に扱ってはならない。

なぜなら、一般書店と図書館では役割が全く違うからです。

図書館は国民に基本的人権の一つである「知る権利」を提供するために存在しているからです。

図書館の自由に関する宣言

図書館はどういった内容の資料であれ取り扱う義務があります。多くの人間にとって「中身がない」と感じられる図書でも、かたよった思想の本でも、卑猥な表現の出てくる作品でも取り扱います。市民はあらゆる情報にアクセスする権利があり、そのための設備として図書館は機能しなければなりません。

実際、文学的に高く評価されている作品には、卑猥な表現のものや、倒錯的だと出版当時は発禁になった作品も多い。偏った思想であると政府に迫害される思想家や活動家の多くが後に歴史に名を残しているのは自明の理です。卑猥な表現であるという理由で図書館から排除されることは許されません。一度それを許したら、あらゆる干渉を許してしまうことになります。図書館利用者としてこの図書館の自由に関する宣言は守っていきたい宣言であります。

しかし、公立図書館ですから市民の意見を取り入れることは必要です。正直に言って私も、「そんなにBL本買う金あるならさきにそろえて欲しい本がいくらもあるぜ…」とも思います。(昔EZLNについて調べようとして図書館にあまりに資料が無いことに絶望した)

しかし、それは図書館・行政・市民で話し合っていくべきでしょう。リクエスト制度についても再考は必要かと考えます(やはりリクエスト結果だけに左右されず、司書によって内容を見極め優先順位をきめるべきでないでしょうか)。

私が言いたいのは、「猥褻物だ」という理由だけで排除されてはならない。そしてあまりに量が多いのであればそれは問題だが、BL本の所蔵が0冊という状態も問題であるということ。書庫へしまうということには問題を感じません。

社会現象としてBLを研究したくなったらどうしたらいいのですか? 図書館はそういったニーズにも答えなければなりません。

もう一つ追記

一番問題を感じたのが実は廃棄の声が市民から出たことであって、

たしかに市立図書館は市民のために存在している。

しかし、前述のとおり図書館とは資料を収集し、保存し、国民の知る権利を確保するために機能しなければならないのであります。

図書館の資料を廃棄するというのは、戦前におこなわれた検閲と全く変わらない。図書館が購入する本を選ぶのは全てをそろえる予算が無いからです。本当ならもちろん国会図書館が理想の姿なのです。どのような本も、図書館から排除されることはあってはならない。たとえ規制を受けて書店から姿を消した発行物であっても、図書館には置かれていなければならないのです。

限られた予算なのだから他の本に回せという理論は理解できます。しかしすでに所蔵されている本が廃棄されるというのは非常に問題であることを強く言いたい。

そして、この市民の声では大阪市内の区立図書館にはBL本がなかったと書かれていますが、

大阪市立図書館の各館(そもそも大阪市に区立図書館はない)は一定量BL本を所持しています。私は市立図書館のヘビーユーザーなのでよく知っていますし、実際図書館ページから検索をかければ一目瞭然です。

大阪市立図書館蔵書検察ページ

大阪市立図書館は地方自治体が有する図書館としてはトップクラスの蔵書量を誇り(最近奈良に抜かれた…)、蔵書にはあまり偏りがありません。当然BL本も一定量あります。

他に書かれていた図書館の所蔵は知りませんが、やはり他の図書館も意図的にBL本を排除しているということはないと思います。予算の関係上購入を控えることはあるでしょうが。

どのような発行物も図書館から排除されてはならない。

「検閲と同様の結果をもたらすものとして、個人・組織・団体からの圧力や干渉がある。図書館は、これらの思想・言論の抑圧に対しても反対する。」

ということで、わいせつ物であるとして刊行停止の判決が出ない限り図書館はこれらの書物を排除してはなりません。また、判決が出た場合でも廃棄はせず、時期をみて資料の提供を再検討しなければならないのです。廃棄はかつて専制政治が繰り返してきた検閲へつながっていくのだということをよく考えて欲しい。

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