南座 五月花形歌舞伎 海老蔵

 14日昼公演へ行ってきました。この日は祇園甲部の総見で、南座に入るとずらっと舞妓さん芸妓さんが並んでお馴染みさんへご挨拶をされています。とても華やかです。

舞妓はん

 夜、一人二人の舞妓さんを見たことはありますが(しかも車に乗るところとかそういう一瞬だけ)、こんなにたくさんの舞妓芸妓さんを見たのは生まれて初めてなんで、俄然テンションが上がる!

 舞台がはじまってすぐ感じた違和感は、大向うから声が掛からないということ。普段はそんなことないんだけど、「主役を立てる」ということなのかなあ、と思い海老蔵の登場を待つ。が、海老が登場してもやっぱり声が掛からない。

 

 大向うのお兄さんが一人も来てらっしゃらない!!

 こんなコト今までで初めてです。ここぞという場面で声がかからないとさみしいし、役者さんもやりにくかろうと思います。

 気になったので帰ってから今月他の日に観劇した人のブログとか読みあさってたら、やっぱりほかの日でも大向うから声が掛からなかったらしい!

 海老蔵様、京都に嫌われてはる!!

 これはおもしろ…じゃなくて、可愛そうです。

 ただ、平日にもかかわらず客はよく入っていたと思いますので、一般受けするが玄人受けしない、もしくは2年前の顔見世ドタキャンが効いている、もしくは大向うのお兄さんがたに何か失礼をした、など色々考えてしまいました。

 普段歌舞伎を見ない人を引き込んでいるという意味では成功している興行だと思います。あと、海老蔵の後援会の番頭さんも来ていなかったのもちょっとした驚きでした…。後援会事情はよくわからないのでスルー。

 海老蔵の舞台は初めて見たのですが、演技自体はまあ、そう悪くないと思うのですが、あまりに海老蔵尽くしなので、海老蔵に思い入れのない身としては少々疲れる。

 上方の花形歌舞伎は「主役オンステージ」になりがちではあるのだけれど、

ただ2月の松竹座の愛之助の花形が若手にいい経験をさせてあげようという配役(若手にいい役、脇を実力派中堅で固め、秀太郎さん・翫雀さんというベテランで舞台を締める)だっただけに、海老蔵オンステージにちょっと(・_・;)となってしまった。

 そんなわけで良かった役者は亀三郎さんと松也さん。「太刀盗人」でのふたりの息の合った?(むしろあえて外した)踊りは筋書きの面白さと、それをよく理解して演じてくださったお二人+市蔵さんのおかげでたいへん楽しめました。

 高時は話も面白かったし、天狗舞も興味深く(澤瀉屋の若手が頑張ります)良かった。

 ただ、最後の演目、海老蔵さん演出の「鎌髭」。

 これが、ちょっと正直…しんどかったね…。

 たしか髭を切るふりをして首を切ろうとする話だったと思うのですが、今回の筋書きではその場面の時点で景清は自分の正体バラしてるんだけど、これだと鎌で髭を剃るという面白みが出なくない?

 あと、立ち回りが期待はずれでした。「大立ち回り」と書いていたので、もっと若さ炸裂の立ち回りをwktkして待っていたのに、海老蔵はわりとゆったりした感じで、若手澤瀉屋の面々のキレある立ち回りに完全に海老蔵が食われていた。正直、演出の問題だと思う。

 先月の南座歌舞伎鑑賞教室では、普段歌舞伎を見ない人も、美吉屋さんのご贔屓さんも、多彩なお客さんがそれぞれの楽しみ方をして、

美吉屋!」

 の声も乱れ飛び、なごやか、かつ活気ある舞台だったことを考えると、初めて歌舞伎を見る人にはあんまりおすすめしない舞台です。海老蔵さんファンの方なら楽しめます。

 もちろん、愛之助美吉屋さんは上方の役者さんでホームだけど、海老蔵はアウェイだったというハンデはありますが、

そのハンデを埋めるためにほかの江戸の役者さんは、上方で公演打つときは、脇に上方の役者さんを出演させるわけです。でも海老蔵は今月一人の上方役者も出していない。澤瀉屋さんの演目をやるから澤瀉屋さんから、というのは分かるが、所詮宗家が分家を使っているだけに過ぎず、そういう気遣いをしていれば大向うさんがゼロという事態は避けられたのでは…。