松竹座 十月花形歌舞伎 夏祭浪花鑑

 夏祭ってなかなか通しでやらないのですが、通しで見てもなかなか面白い狂言でした。

 この間、夏に文楽の方の夏祭を見たばかりでしたので、韋駄天の動きの写し方とかもよく比較できて楽しかったです。愛之助、素晴らしかったです。我當さんによく教えてもらったのか、上方の香りかぐわしい、これぞ松嶋屋と思わせるだけのものを持ってきたと思います。

 ほかに良かったのは番頭役の市川猿弥さん、そして義平次役の方、どなたでしょう? 不勉強でわかりませんでしたが當十郎さんあたりかなと思っておるのですが…

 そしてすごく期待していた上村吉弥さんのお辰ですが、気負いがあったのか、あまり伸びやかではなかったかなあ、と思いました。まあ、三日目の舞台でしたので、今後よくなっていくと思いますが。

 さらに、今月、夜の部も上村吉太朗丈、丁稚の役で出てらっしゃいました。確実によい経験を積んでいってらっしゃって、今後の成長も楽しみです。

 壱太郎丈も上手かったのですが、お梶をするにはちょっと年若すぎたかな、凄みが足りないかなとか思ってしまいました。やっぱり今はまだ、可憐なお役の方が映える気がする。でも、お梶を演じたことは、今後の壱太郎丈の演技の幅を広げるでしょうから良いことと思います。

 大詰めの愛之助の立ち回りを見て、この凄みは、昨今の御曹司にはなかなか出せない味やな、と思いました。誰とは言いませんが…

 愛之助、実力も人気もついてきて、これからが非常に楽しみです。これは、ひょっとしたら、ひょっとしたりするんではなどと…思ったりして。