宗教都市天理へ行ってきた! その1

   天理市には、天理教の聖地があり、天理教の関連施設が立ち並ぶ、日本随一の宗教都市です。市の名前自体が宗教名から名付けられており、こういう都市は日本では天理市だけ!
 駅前の広場は絶賛工事中でした。多分、古墳を模したオブジェを作っている最中みたいです。
 この地域は古代豪族の物部氏の本拠地で、周辺には数多くの古墳があります。古代の道、「山辺の道」の中間地点でもあり、古くから栄えた地域です。

 ということで、まずは駅から約3㎞離れた石上神宮へ向かいまつ。私はバスで向かいましたが、バスの本数めっちゃ少ないので気をつけてください。
 バスは天理市の中心部を通っていくのですが、本当に天理教関連施設が多いです。特に神殿の偉容には圧倒されますが、これについてはあとで触れるので流しまして、バスは少し山を登り、石上神宮バス停につきます。
 と言っても、このバス停から石上神宮までは10分くらい坂を上ります。その途中にも天理教の施設があります(下)。詰所とは天理へ来る天理教信者のための宿泊施設だそうですが、一般の人も利用できるみたいですね。詰所は市内いたるところにあって、きれいな所もあれば、割と汚そうなところまでピンキリでした。
 天理教詰所 
 石上神宮物部氏氏神として有名ですね。古代史上重要な剣「七支刀」があったり、あの有名な刀「小狐丸」とされる刀のうち一振があったりします。
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 石上神宮は鶏がたくさんいることで有名ですが、ホームページをみる限り、どうやらここの神様の神使というわけではないようです。奉納品(奉納鶏)のようですね。石上神宮ページ
 
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 鎧櫃がありましたよ! 本物の鎧櫃をみるのははじめて見たので感動しました。思ってたより底が深いですね。コレくらいは必要なのか。ほほう。



 さて次は、石上神宮から歩いて天理参考館へ向かいます。この天理参考館はめずらしい考古学資料が多いというウワサをきいて、前から来てみたかったんです。
 天理教はこの天理参考館の所蔵品の他に、様々な稀覯本を所蔵しているのでも有名みたいですね。天理大付属天理図書館で広く一般に公開されています。
 石上神宮から左へ下っていくと、天理大学方面に出ます。グラウンドでは天理大野球部が練習していました。この中から未来のプロ野球選手が出るのかも…。
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 このあたりから建物はいわゆる「天理建築」の様式のものが続きます。紅殻色の窓枠、特徴的な反りのある屋根、あと基本的には高床なのかな? そしてなぜか建物の横にそびえる煙突。おそらくなにか宗教的意味づけがあったりするのでしょうがよく分かりません。建築物としてなかなか魅力的だと私は思うのですが、どうでしょうか。

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 天理大の施設を突っ切っていくと大通りに出ます。大通りの上に高床の要領でそびえ立つ建築。規模が違う。すごい…どういうこと? 
 詳しい施設配置はいまいちよく分からないんですが、天理参考館はおそらく天理教の主要施設群の一画にあると思われます。
 参考館は3階までで、1階が「世界の生活文化」、2階は「世界の生活文化」の中の日本関係、3階が考古美術です。
 参考館の入口に理念が掲げてあり、要約すると、世界に布教するためにはそれぞれの文化・宗教などを理解しないといけないみたいな感じでした。根本には布教の思想があるようですが、展示自体は一部を除いて天理教の色が全然ない、きわめて博物館らしい博物館です。
 むしろ、他の宗教に対する深い理解と尊重の姿勢は、公共博物館の上を行くかもしれません。1階は各地の文化・芸能・宗教儀式などについて展示されていますが、特に原住民や少数民族のくらしを紹介するのに熱心なように思います。多分得意分野は朝鮮半島と台湾、琉球よりはアイヌが得意そうです。アイヌの民具は種類・量ともに非常に多い。
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 「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」で日本でも(私の周りでは)話題になった台湾・布袋劇の展示もありました。
 
 2階の手前のスペースは、布教のためアメリカ大陸へ渡った天理教信者の方々についての展示があります。
 正直に言うと、こういう展示部分で「偉大なる~は」みたいな信者さんにしか分からない宗教文脈に触れられるのではないかとワクワクしていたのですが、解説文は非常に冷静で客観的、歴史学者の視点。
 天理教会と信者という関係だから収集できたのだろうな、という個人的なものも多くあって、豊富な資料が当時ブラジルへ渡った日本移民の生活を物語って大変興味深い。国内では他に類をみないコレクションではないかと思いました。

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ブラジルの天理教会から得た民具や資料で復元されたブラジルの日本移民の家
 内装も細かくレベル高いぞ。

 北アメリカへの移民についても、二次大戦中の苦難の歴史が、アメリカの天理教会の編纂と共に語られる。
 日本移民のことについて、全然知識がなかったので、大変興味深かったです。

 二階の主な展示は、日本の庶民の生活と文化を紹介するもの。所蔵品は価値の高い低いではなく、庶民の生活の歴史を残すことに重きが置かれている感じがして、とてもよい民俗展示。
 季節がらさまざまな時代のお雛様の展示があってとても面白かった。享保雛はやっぱりかっこいいなあ。
 それと、天理教の歴史に関わる資料ももちろん豊富なのだが、やはり扱われ方はあくまで歴史資料としての扱われ方だった。

 そしていよいよ三階の考古美術!!!!
 圧倒的である。大きく分けて日本・朝鮮・中国・オリエント文明の考古美術を収集している。まず三階入口ホールにて布留遺跡についての資料がある。天理市中心部はまるごとこの布留遺跡の上に立っているんだそうだ。もちろんこの天理参考館も布留遺跡の中に立っている。物部氏の支配地域で、かなり大きな遺跡のようです。古墳時代のものがたくさんみられますよ。
 展示室に入ると、いきなり縄文土器がある。東の人には分かってもらえないだろうけど、関西圏の博物館において縄文土器を拝めるというのは、僥倖である。縄文土器好きな私はこの時点で狂喜乱舞だ。
 そして中国の青銅器も状態のいいものがたくさんある!!(青銅器も好きなのである)
 あと、甲骨文字が彫られた骨がある! 実物初めてみた!!

 三彩陶については、素人目からみてもあきらかな優品が多く、熱心に収集されていたのではないだろうか。
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(写真)どう考えてもやばくない?? すごくない?

 オリエント文明は全然詳しくないんだけど、なんか国立博物館とかでしかみたことない雰囲気のすごそうなものがごろごろっとある。

 これ、多分めんどいから国宝にしてないだけで、ホントに国宝級の結構あるでしょ? たぶん。。。

 布教を目的として収集、研究された資料だが、参考館はあくまで博物館としての役割に徹しており、おそらく意識的に天理教という宗教色を排除している。もしかすると天理教に詳しい人からすると非常に天理教らしい部分があったりするのかもしれないけれど、少なくとも素人の博物館好きにすぎない私にとっては「めっちゃいい私立博物館~~。ほんとに割と博覧的~」という印象でした。

 このあと、神殿に向かい、商店街を散策するのですが力尽きたため一旦ここまで。