南座歌舞伎公演の楽しみ方

 去年、改装工事を終え、新開場となった京都南座
 新しい機能も備え、これまでにない種類の公演もどんどん行うとのことで、期待が高まりますね! 特に今年八月には、今まで「ニコニコ超会議」にて公演を重ね、全く新しい歌舞伎として好評を得てきた「超歌舞伎」がはじめて本興行として南座に登場します!

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 私も超歌舞伎、一度だけ幕張まで見に行かせてもらいましたが(他公演は映像で見ました!)本当に素晴らしくて、これが南座で興行されれば、より幅広い層の方にご覧いただけるんではないかととってもワクワクしています。

 同時に、今まであまり歌舞伎になじみのなかった方、南座を利用されたことがなかった方も今回南座にいらっしゃるのではないかと思います。
 南座はとても特徴のある、素晴らしい劇場です。同時に、建替えられたとはいっても古い特徴を残しているので、最近のラグジュアリーな劇場に比べると使いにくい部分もあります。以下に南座について、また松竹の歌舞伎興行について書きますので、ご観劇の参考としていただければ幸いです。

 

絵看板

 南座と言うと、正面にずらっとまねきが上がっているところを思い出す方は多いと思います。超歌舞伎南座公演が決まった時、ミクファンの方が「初音ミクのまねきが見れる」と喜んでいらっしゃったのですが、残念ながら、南座にまねきが上がるのは年末の「顔見世興行」の時だけです。初音ミク南座で立女形をする記念になるので、私ももしできるなら初音ミクのまねきを見たいのですが(松竹さん…!)、残念ながら可能性は低いかと思います。

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南座のまねき

 その代わり、歌舞伎興行には「絵看板」というものがあります。
 これはその名の通り、上演される演目のストーリーが分かるような場面を描いた絵の看板です。これは顔見世に限らず、歌舞伎の興行では上がることが多いのですが、イレギュラーな興行では上がらないことも多く、超歌舞伎は上がらないかもしれませんが・・・松竹さん・・・!!
 もし、超歌舞伎の絵看板が上がる場合、どうなるのか。松竹座のワンピース歌舞伎の時は、絵看板を上げる場所に尾田栄一郎先生が書きおろしたイラストが飾られていました。原作のしっかりしている漫画の歌舞伎化に比べて、初音ミクはより自由度が高く、デザインもイラストも、書く人によってそれぞれの初音ミクがあると思います。個人的には、日本画初音ミク、とっても見たいんですが…。松竹さん…!!

 しかし、もし絵看板が上がらなくとも悲観するに及びません。もう一つ、南座には名物があります。それは手描き看板!!
 絵看板が上がらない場合、劇場正面に大きな看板が上がるわけですが、南座の大看板は手描きなのです!! すくなくとも改装前はそうでした。変わってないでしょさすがに・・・(ちょっと不安)。これもなかなか現在では見られるところが少ないので、ぜひ堪能していただきたいです。

 

劇場内座席

 南座正面入口から入場すると、エントランス入ってすぐホールです。エントランスロビーと呼べるほどの空間はありません。入場すぐホールって感じ。入口からすでにホールの扉が見えます。狭いです。
 そう、南座のとても大きな特徴、それは狭いこと。正直圧迫感あります。出入りの多い時間帯のエントランス前など非常に混雑します。

 建替えの際、一階席は少し広めに作り直されたそうです。クッションもよく、幅も広めで、格式高い劇場にふさわしい空間になっています。

 一階の両側には桟敷席があります。一番値段の高い席です。私は桟敷席に座ったことがないので、よくは知りませんが、掘りごたつ式でテーブルもあって、プライベートな空間を確保できる、素敵な席なようです。

 二階席も一階席ほどではありませんが、それなりに幅の広い席が用意されています。普通にいい席。

 問題は三階席です。とても狭い。座席間の幅が狭く、足がつっかえます。私の身長は160cmちょっとくらいですが、三階席に座ると膝が前の座席の後面にくっつきます。私より身長の高い人は膝が圧迫されてしまうかもしれない、それくらい狭いです。シートのクッションも一階席とは雲泥の差、長時間座っているとかなりしんどいです。前の席との幅が取れていない分、舞台を見やすくするためには座席の傾斜を急にしなければいけません。よって地面の傾斜がきつく、後方の座席に座るためには急な階段を上らなければいけません。正直、膝の悪い方にはオススメしないです。
 しかし、三階席は悪いことばかりではありません。まず、舞台が良く見える。他の松竹の劇場の三階席でも舞台が見にくいということはありませんが、南座はとりわけよく見えます。舞台が近いからです。劇場が狭いということが、この場合利点になります。三階席はどの公演でも一番安いお値段の席になりますが、このお値段でこれだけ目近に舞台がみられる劇場は他にありません。観客席の傾斜がきついため、舞台がずり落ちたはるか下に見える感覚、これも説明しがたいのですが小さな劇場の天井際にいるからこそ感じられるすてきな気分です。まさに「天井桟敷の人々」。
 また、三階席には一階席にはない楽しみもあって、大がかりな舞台装置の全貌を一望できるのです。回り舞台やせり出しなど、ダイナミックな舞台転換、大道具の仕事などは、一階席で見るより三階席で見る方がいいと、個人的には思っています。
 それから南座の伝統的な美しい折り上げ格天井を間近でみられます。舞台をみている間、常に破風が視界に入っているのも南座の三階席ならではの風流です。(南座の内装については後に別エントリを書くかも書かないかも)
 また大向こうの会の方が大向こうをかけるのは、三階席後方から。超歌舞伎の大向こうがどういう雰囲気になるか未知の部分もありますが、上方ならではの大向こうを間近で体感できるのも三階席の醍醐味です。(大向こうには上方、江戸それぞれの特徴があります)
 ともかく三階席は欠点もあるが、大きな長所もある、素晴らしい席です。御自身の傾向と合わせてお席を選ばれるとよいかと思います。

トイレ

トイレ大事ですよね。南座は狭いので(何度目だ)、トイレの数もやや控えめで、女子トイレはとても混みます。しかし今回の改装で新たに地下に女子トイレが増設されました。トイレは各階にありますが、地下トイレが一番数が多いのでねらい目です。しかし三階席で観劇していたら地下トイレに行くのはなかなか大変で・・・。その辺は臨機応変にお願いします。

 

 本当は分かりにくい南座ロビー問題、南座の美しい意匠なども紹介したかったのですが、今回はここまで。ヒマだったら第二弾かきますね。

 また、以前歌舞伎観劇でよくきかれることなどについて記事にしたこともあるので、よければそちらも参考になさってください。

tsubana.hatenablog.com

 

 よき南座観劇を!!!