リンカイ小説!

そしてさっきのをトップにしておくのは怖いので、さらに連投。これもにゃっぽんに投げたもの。

リンカイ小説です。このカップリングがダメな人は回避お願いします。

気になった人は追記でお願いします。

「リン!レン! ホワイトタイガーを知っているか!」

 なにやら興奮しながら、兄はわたしたちの部屋に入ってきた。

「ホワイトタイガー??」

「白い虎なんだ! 宝塚ファミリーランドにいるんだ! 見に行きたくないか?」

 そういいながら、兄は少し古ぼけたパンフレットをばさばささせていた。

表紙には確かに白い虎の写真が載っている。

 正直白い虎なんか見たくもなかったが、……お兄ちゃんとお出かけには行きたい!

「見たい見たい!」

「レンは? 行かないか?」

「…ていうか、兄ちゃん、ファミリーランドは…」

「行きたくないよね?」

レンの言葉をもぎとって、わたしが続けた。

「しょうがないよー。レン行きたくないって。二人で行こうよ」

「いや、めーちゃんとミクも誘って…」

「二人とも忙しいからムリだよ。二人で行こうよ」

「そ、そうかな…」

 わたしのゴリ押し作戦にもうちょっとで兄が墜ちるという寸前にレンが話の腰を折ろうとした。

「リン、兄ちゃん、ファミリーランドはね、もう…」

「じゃあ、明日行こう! でも明日めーこ姉もミク姉も仕事だって言ってたよ。しょうがないから二人で行こう!!」

「そうか、仕事なら仕方ないな。じゃあ、二人で行こうか!」

 いょっしゃあああ! 二人きり!!

 もの言いたげなレンは黙殺して、わたしと兄は明日の計画を練り始めた。

 電車の中でも、お兄ちゃんははしゃぎまくっていた。そんなにも白い虎が見たいらしい。

「白い虎って、すんごいめずらしいんだぞー、リン。ファミリーランドの目玉なんだ!」

「へぇー、すごいね、お兄ちゃん!!」

 はしゃいでいるお兄ちゃんはとてもかわいいが、白い虎は正直どうでもいい。

 宝塚駅に着いたが、駅の案内板にはファミリーランドの表示がなかった。

「駅員さんに聞いてみようか」

 兄はそう言うと、近くにいた駅員さんにファミリーランドの位置を尋ねた。

「え? ファミリーランド??」

 駅員さんは素っ頓狂な声をあげた後、少し哀れむような目でわたしたちを見た。

「お客さん、ファミリーランドはね、もう5年も前に閉園したんですよ。今はガーデンフィールズっていう有料の公園になってます」

 兄は凍りついた。

「英国風の庭園で、結構キレイですよ。あ、あと、手塚治虫記念館もあるし!」

 兄があまりにもショックを受けていたので、駅員さんは気を使ってそんなことを言ってきた。

「す、すごいじゃん。お兄ちゃん、わたし手塚治虫けっこう好きなんだ! 行ってみたいな」

 正直、手塚治虫なんて去年の暮れ生まれたばかりのわたしは読んだこともないんだけど。

「…………ホワイトタイガーは?」

 わなわな震える手で、パンフレットを握り締めながら兄は駅員さんに詰め寄った。

「ホワイトタイガーはいますか?」

「ホワイトタイガーはもう、いませんね。今はドッグランがあるので、いっぱい犬がいますよ」

「お、お兄ちゃん! ワンコがいっぱいだって! わたし、ワンコ好きなんだ! 行ってみたいな」

 軽く放心状態の兄は、わたしがそう言うと小さくうなづいて、「じゃあ、行こうか」と呟いた。

 駅を出て、わたしたちは花のみちをてくてくと歩いていった。一面の桜並木がとてもきれいだ。

「ごめんよ、リン。せっかくリンにホワイトタイガーを見せてあげようと思ったのに…」

「全然いいよ! それより、ほらみて! この桜! この桜をお兄ちゃんと見られただけで大満足だよ」

「リンは優しいね」

 兄はしみじみとそう言った。

 ……いや、わたしはホントに白い虎はどうでもよかったんだけど。お兄ちゃんが見たかっただけでしょ?

「リン、髪にいっぱい、花びらがついてるよ」

 兄はそう言うと、わたしにそっと近づいてちょっと顔を近づけてきた。優しく髪に手を当てられて、わたしは一瞬動きが止まった。

「ほら、取れた」

 優しく微笑んで兄は告げた。なんでだろう、まだ、少しドキドキしてる。

「ねえ、お兄ちゃん。来年もまた一緒にここに来よう。ホワイトタイガーなんかいなくても、二人ならきっと楽しいよ!」

「そうだね。でも……」

「でも?」

「ホワイトタイガーがいれば、きっともっと楽しかったのにな…」

……二人きりでいるというのに、兄の心を占めているのはホワイトタイガー。

わたしは生まれて初めて、動物に殺意を覚えたのだった。

はい、残念でしたね。ホントにごめんなさい。これがいっぱいいっぱいだったんだ。

ちなみにホワイトタイガーは現在東武動物園にいるそうですよ、カイトくん。