アリス・イン・ワンダーランド(Alice in Wonderland)のレビュー

 今さら感ひしひしですが、先週末に見たアリス・イン・ワンダーランドの感想を書いてみたいと思います。

 まず結論から言うと、うん、悪くはない。悪くはないんだが、というか悪くないからこそモヤモヤする、そんな感じの作品でした。

 まず、私が好きだなーと思ったのが赤の女王です。彼女はあの頭でっかちな外見に強烈なコンプレックスをいだいていて、それゆえに周りを信用できず、それが恐怖政治につながっていきます。しかしそのコンプレックスゆえに畸形に対して理解があり、人に忌み嫌われるものを嫌わず、むしろ身辺に置く。

 敵を捕らえてもすぐに殺したりせず子飼いにしてしまうところなんかも、そんなに悪い人でなさそうな雰囲気を感じます。また、好きな男性の前では非常にかわいらしい表情をみせたりという人間的な一面もあったり。

 彼女には愛されたいという欲求がある。そして妹の白の女王ばかりがみなに愛される現実に「なぜ私は愛されないの」とこぼす。すごく魅力的な人物だと思いました。

 この人が人を信頼する心を取り戻したとき、すばらしい為政者になれると私は確信したものです。

 そもそもティム・バートンはこういう種類の人物描写にこそ真骨頂がある。

 「シザーハンズ」にしろ「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」にしろ、人に恐れられ、しかし愛されることを望み、しかしその本人の思いとは裏腹に人々のあいだにヒステリックに広がっていく恐怖という悲劇。赤の女王は若干自業自得の感もありますが、それでも私が彼女に強く感情移入したのは当然かと。

 それに対してアリスと白の女王(つまり主人公パーティー二大ヒロイン)には魅力が乏しいように思う。

 確かにアリスは徐々に決断力をつけていくが、結局運命に流されている感は拭えないし(それを物語の軸にすえている以上もっと思い切った行動に出ることが必要だったと思う)、白の女王はたぶんいい人なのだが、蝶よ花よと育てられた感じのほんわかお嬢様で、苦悩にのた打ち回る赤の女王の魅力には及ばない。それにネタバレになるのであまりかけないが、王族ゆえの無意識な傲慢さをのぞかせる言動もあり、個人的には好きになれない人だった。この人を真の女王に! ていうストーリーについていけない私。←物語の基軸から踏み外している人

 そんな主人公パーティーの中で、ハッター(帽子屋)の存在感はずば抜けていた。

 抑圧の赤の女王の時代をアウトサイダーとして生き抜きアリスを待ち続けた誇り高さ、その中で彼を少しずつ侵食してく狂気、それをアリスの一言で救われるという彼の物語はティム王道のファンタジーといった感がある。

 ハッター主人公やったらよかったのにね

まあ、かように多層で多彩な人物設定がなされていたのに、最終的に単純な勧善懲悪の話にしようとしたところに全ての失敗があったと思う。

 私がプロデューサーならティムにこういったのに

「ティム。赤の女王の孤独が救済されてこそ、この物語は完結するんだよ! ハッターは彼女の所業を許し、彼女の痛みに寄り添い、二人は真実の愛に目覚める! アリスは勝手に現実に帰ればいいよアデュー!」

 

 アリスが結構あっさり現実に帰ったのは、ティムのちょっとした製作サイドへの仕返しだと思ってます。私が勝手に