鏡音リン・レン お誕生日おめでとう~~~~!!

本日は鏡音リン・レンの発売日、ちょうど一年経ちました! リンレンちゃん、お誕生日おめでとうございます!!

私からのささやかなお誕生日プレゼントSSです! 受け取ってねw

内容はレン視点・プレゼントのお話です。

続きからドウゾー

 12月になった頃から、リンはマフラーを編みはじめた。大量の黒い毛糸を買い込んできて、あみものの本とにらめっこしながら、真剣に編んでいる。

「だれにあげるの?」

 軽い気持ちでオレ(レン)がそう尋ねると、リンはなぜか恥ずかしそうに黙り込んだ。

「レンくんには内緒なんだよね~~!!」

「ミク姉!!」

 リンに怒られて、ミク姉はにやにやしながら口を閉じた。どうやら女同士のヒミツらしい。ということは男にプレゼントだろう。リンがプレゼントをしそうな男というと、カイトしか思いつかない。ああ、オレって名探偵。

 カイトに黒マフラー!!?

 カイトといえば青マフである。青マフは彼のアイデンティティそのものとさえいえるアイテムだ。そんな彼に黒マフラーを贈ったら、彼は困るだろう。

 そして、もし仮に、仮に「カイトの本体は青マフの方」といううわさが本当だったら!! カイトの秘密がバレてしまう!!

「ちょっと、リン…黒マフラーはどうかと思うぞ」

「なんで!!?」

 リンはびっくりしたような顔で聞き返した。

「いや、黒は似合う人を選ぶというか…」

 あの白と青のコントラストに黒いマフラーはどうだろう。

「それなら大丈夫。似合うから」

 リンはそう言って編み物を続けた。

「レンくーん、黒はねえ、なんにでも合わせやすい、汎用性の高い色なんだよぉ。レンくん、女の子になにかプレゼントするときは、お姉ちゃんに相談しなさいね!!」

 ミク姉が哀れみに満ちた顔で言った。ていうか、なんでそんなん言われなあかんのだ。

 リンはどうあってもカイトに黒マフを渡すつもりらしい。しかし、哀れな兄はことわりも出来ず困り果てるに違いない。そんなかわいそうな兄のために、オレは立ち上がった!!

作戦その1 せめて青マフラーを編ませる

 説明しよう!

 カイト兄だって、いつも着けているマフラーをたまには洗ったりするはずだ……たぶん。そんな時に換えのマフラーがあると便利! リンにっこり、カイトもにっこり作戦だ! ただこの作戦は例の「青マフ本体説」が真実だった場合、意味をなくすのだが、今はそれは考えないようにしよう。

 オレは大量の青い毛糸を買いこんできて、リンに言った。

「なあ、リン~。オレ、あみぐるみ作ってたんだけど、飽きちゃってさー。リン、この毛糸使わない?」

 リンはしばらく青い毛糸を眺めた後言った。

「レン、青色好きなの?」

「え? いや別にそうでもないけど…」

あみぐるみって何作ってたの?」

 え? そ、そんなの考えてなかったよ…。

「え、え~と、くまさん?」

「……ふーん」

 リンはそう言うとそのまま黒い毛糸でマフラを編み続けた。

作戦その1.01ver 黒い毛糸がどこかに消えた!

「レン、ここに置いてた黒の毛糸知らない~?」

 リビングに毛糸を置きっぱなしにしていたリンはきょろきょろ毛糸を探しながらオレに尋ねた。

「ええ!!? ないの!!」

 オレは大げさに驚いてみせた。

「どこいったんだろうねぇぇ、あ、ホラ青い毛糸ならあるよ、ここにw」

「……」

 リンはオレの顔をじっと見た。なんか、やばい予感がする。 バレてる??

「ど、どしたの? リン?」

「死にたくなかったら10秒以内に持ってこい」

「え…だ、だからオレじゃないって…」

 しどろもどろになりながらそう言った。

「ああ!? もう一回言ってみ? ただし、よく考えてからな…」

 リン様は右手でこぶしを作りながらおっしゃったので、オレは5秒で黒い毛糸をお届けした。

作戦その2 おまけをつけてみませんか?

 黒マフにカイトが困ることは間違いない。しかし、おまけが付いていたらどうだろう。

「お兄ちゃん、私のプレゼントの黒マフはどうしたの?」

「うん? 今日はお留守番なんだ。だけどほらコレ(おまけの方)はちゃんと持ってるよw」

て感じでごまかしきれる! 

 オレは密林さんのサイトでかわいいアイスのストラップを見つけた。

「なぁなぁ、リン見てコレ! このストラップ、カイト兄喜びそうじゃね?」

「はあ、そうだね」

 リンはちらっと見ただけで、またマフラーを編み始めた。

「こ、これカイト兄に買ってやったらいいと思うんだけど…ほら、クリスマスプレゼントに…」

 リンは怪訝そうにオレを見た。

「レン買えばいいじゃん」

「お、お前買わない??」

「なんで私が買わないといけないのよ!! 私のクリスマスプレゼントをなんであんたが決めるのよっ!!」

 リンは腰に手を当てて、ぷりぷり怒っている。た、確かに正論だが…その結果が黒マフだろっ??

「もう、しばらく話しかけないで!!」

 リンの逆鱗に触れ、この作戦は断念せざるを得なかった。

 手を尽くしたが、力及ばず黒マフを阻止することは出来なかった。リンは毎日一生懸命マフラーを編んでいたが、クリスマスを過ぎても出来上がらず、もはや年末が迫っている。一生懸命編んでいる姿を見ていると、ヘタに邪魔することも出来なかった。

 もう明日はオレたちの誕生日なのに、リンは忘れちゃっているのだろうか? なんだかそう思うと面白くなかった。

 あと何分かで日付が変わって、僕らの誕生日。黒マフ完成が間近に迫ったリンは、いつも以上に気合が入っていてオレは声をかけることができなかった。

「にこにーこどうがー」

 開けっぱなしのPCから聴きなれた時報が聞こえて、今日が始まる。

「できたっ!!!」

 リンの元気いっぱいの声を聞いても、なんだか気分が浮き立たない。

「よかったねー」

 どうしても心のこもらない声で、振り返りもせずにオレはリンに言った。

「うん! なんとか間に合ったわ!!」

 ……間に合った?

 後ろから首に何かを巻きつけられて、オレはゆっくり振り返った。

「お誕生日、おめでとうレン!」

 オレは首に巻きついた黒いものをおそるおそる手にとって眺めた。

「な…なんか言いなさいよっ!」

 リンは顔を真っ赤にしながらそう言い放った。黒マフにはいつの間にか青色のワンポイントが入っているが、ガタガタのきっかいな模様でなんなのか分からない。

「この青い模様…なに??」

「そ、それは…ただの模様よ! リン様独自の!! 独創的でしょ?」

「くまさん入れようとして失敗したらしいわよ…」

 ミク姉が耳元でささやいてくれた。そういえばくまさんの面影が無きにしも非ず…。

「ちょっと!! ミク姉!!」

 リンは耳まで真っ赤になって怒っている。

「ありがとうな、リン。すげえあったかいよ」

「べ、別にただ、ちょっとヒマだったから作っただけだけどねっ。ま、まあ気に入ったんなら使いなさいよ」

「あ、そうだ。コレ」

 オレはポケットから小さな包みを取り出してリンに渡した。

「えと、その、お前のに比べたらショボいけど…これ、あげるよリン」

 リンはびっくりした顔でそれを受け取ると包み紙をビリビリに破いた。中身は昨日一日雑貨屋やアクセサリーショップを廻って買ってきたひまわりの付いた髪留め。

「あ、あんまりお金無くて…(青い毛糸を買ったので)。で、でもお前に似合うかと思って」

「へ、へえ、あんたにしたらまあまあ趣味いいんじゃない?」

「リンちゃん、お礼言わなきゃダメでしょ」

 またミク姉が耳元でささやく。

「あ、ありがとう…」

 リンは恥ずかしそうにそう言った。

「お誕生日おめでとう、リン」

 オレもなんだか恥ずかしくなって、顔が熱くなった。