またもリンカイ小説です!!

 またもにゃっぽんから持ってきた小説です。

 こちらもリクエストいただいて書かせていただきましたー。

リクエストは「リンとカイト。できればリンに振り回される兄」ということで。

 振り回すことに重きを置きすぎてリンがかなり痛い子です。

 書いてるうちは非常に楽しかったんですが、読んだほかの人が楽しいかはよくわからないっす。

よかったら読んでやってくだしあ

 ……つまらない。

 

 リンは居間で、もしゃもしゃみかんを食べながら退屈しきっていた。

 最近、マスターはカイトの歌のレッスンにかかりっきりで、カガミネーズをほったらかしなのだ。

「ねえ、レンどっか遊びに行こうよ~」

 隣に座っているレンの腕をつついてみる。

「ヤだよ。俺、MEIKOロボ見るから。一人で行ってくれば?」

 レンはテレビから視線を外さずにそう答えた。彼はレコ屋で買ってきた中古のMEIKOロボのLD-BOXを一日中見ている。リンもMEIKOロボは面白いとは思うけれど、でも一日中見てるほどじゃない。

「ツマンネ。お兄ちゃんも遊んでくんないし、ちっともおもしろくなーい!!」

 リンは手近にあったLD-BOXの箱を、ぐしゃっと手で潰して放り投げた。

「お…お前、なにすんだ~~!! 今じゃなかなか手に入らないお宝なんだぞ!!」

「つまんないから、お兄ちゃんとマスターにちょっかい出してくる!」

 半狂乱におちいったレンを尻目に、リンはマスターの部屋へ向かった。

「お兄ちゃーん」

 ノックもせずに部屋に入ると、カイトが泣いていた。

「……マスター!! お兄ちゃんに何したのよ!!?」

 リンはすぐにカイトのところに走っていき、カイトを自分の背中にかばった。

「なにって…なにもしてないよ! ただ、何回やってもリズムが合わないからちょっとイラッとしただけで……」

「うそをつくな! マスター、お兄ちゃんにあんなことやそんなこと、果てはこんな無体を強いようとしたんだろう!」

「むたい?」

 不思議そうにカイトが呟いた。

「ちょ、リン、どんな妄想だそれ! 断じてそんな事実はない!!」

「こんな密室に二人きりにさせては置けないわ! お兄ちゃんの身柄は私が預かります」

「え、でもリン。まだ歌のレッスンが……」

 そう言いかけるカイトの言葉をさえぎって、リンは力強く言った。

「いいから黙ってついてきなさい!!」

 歌のレッスンに未練があるらしいカイトを半ば引きずるようにして、リンは家を出た。

 やった! お兄ちゃんとお出かけ!! さっきまでの退屈が嘘のようだ。

 リンは上機嫌でカイトに尋ねた。 

「お兄ちゃん、どこいこっか? 遊園地? それともショッピング?」

「でも、リン。お金がないよ」

「大丈夫だよ」

 リンは胸ポケットからキャッシュカードを取り出した。

「マスターのカード持ってきた。暗証番号は1129。勝新太郎の誕生日だよ」

「……えええええ!!!!? だ、ダメだよ、リン! 返しておいで!!」

「ええ? 大丈夫だよ。こないだもレンがこれ使ってLD-BOX買ってたもん」

「と、ともかくそれは使っちゃダメだよ!!」

 リンは不服そうにカイトを見上げた。

「じゃあ、お兄ちゃん、お金いくら持ってるのよ?」

「え……と、二千円」

「そんなの、なんもできないじゃん!!!」

「で、でもダメだよ…。マスターが稼いだお金なんだから、僕らが勝手に使っていいもんじゃない」

 リンはしばらく未練がましくカードを眺めていたが、はあっと溜息をついてカードをしまった。

「しょうがないなあ。じゃあ、二千円で遊ぶか! 商店街へ行こう!」

 

 地元の商店街は、アーケードこそあるものの、店の数はそれほど多くない。

「お兄ちゃん! 喫茶店でお茶しよう!」

 そう言って、リンは商店街に一軒だけある喫茶店へ入っていった。

「抹茶パフェとー、あとミックスジュース!」

 リンがそう叫んだ瞬間カイトはすばやくメニューに目を走らせた。

抹茶パフェ 740円 ミックスジュース600円 合計 1340円

 あと、660円か… そしてアイス3種盛り合わせは700円かあ…!!

「お兄ちゃん、お水でいいよねっ!」

「え……」

「注文以上で!」

 パタン、とメニューを閉じてリンが宣言した。

 ……水になりました。

「昨日はね、みんなでバーゲンに行ったんだよ! ワンピース買った! 後で見せてあげるね!」

 リンは近所の友達と遊んだ話をたくさんした。カイトはそんなリンを微笑ましく思いながら、……水を啜っていた。

「よし、出よう!!」

 いっぱいしゃべって満足したリンに言われて、カイトも席を立った。なんだか物足りなくてひもじかった。

 スカートのやたら短い喫茶店のお姉さん(30代後半)に貰ったお釣り660円を握りしめて、カイトは意を決してリンに言った。

「ね、ねえ、スーパーでアイス買わない? リン、アイス好きでしょ?」

「いや、全然。てか、さっきのパフェにアイス入ってたし要らない」

「で、でもあと660円あるし…。リン、アイス食べようよ! ね?」

「えー。なんか他のことにお金使おうよ~。あっ」

 リンはぱんっと手を打って、愛らしい笑顔で言った。

「見てみて、お兄ちゃん。あそこにインスタントの証明写真機があるよ!! あれで、今日の記念に写真を撮ろう!」

「え…」

 その証明写真機にはでかでかと600円と書いてあった。

「だってー、この街、プリクラないんだもの。いいでしょ? かっこいいお兄ちゃんを友達に自慢するんだ!」

 そう言われると、カイトも悪い気はしない。

「え…ま、まあ、あと660円あるもんね…」

「じゃ、決まりね!! 早く早く!!」

 そう言ってリンはカイトを椅子に座らせた。

「リン、ここ、すごい狭いよ。ふたり入れるかな?」

「大丈夫!」

 そう言うと、リンはカイトの膝の上に座った。

「ちょ、ちょっとリン!」

 とても狭い場所なので、二人はかなりの密着状態になった。

「ほら、お兄ちゃん、お金入れてよ!!」

「いや…リンが邪魔で入れらんないよ! お金入れるトコどこにあんの?」

「ほら、ここだよ!」

「ちょ、くすぐったいよ!」

 写真を撮るだけなのに、ものすごく時間がかかり、はしゃいで膝から落ちそうになるリンを支えるのでカイトは疲れきってしまった。そんなカイトとは対照的に、リンは出来上がった写真を見て非常に満足げだ。

「家帰ったら半分こしようね! お兄ちゃん!」

「うん……」

 はあ、と溜息をついたカイトをリンは不思議そうに見上げた。

「どしたの、お兄ちゃん? 疲れちゃった?」

「うん、ちょっとね……」

「しょうがないなー。じゃあ、リンが疲れたお兄ちゃんのためにアイス買ってあげるよ!」

「……え??」

 そうは言ってももう60円しかない。

「これで好きなアイス買っていいよ。あ、お釣りは返してね!」

 そう言ってリンは胸ポケットから五千円札を出した。

「…………リンちゃん、お金持ってたんだ…」

「うん。そりゃ一応お金くらい持ってるよ」

「…………」

「え゛!! まさか! お兄ちゃん、私のお金を当てにしてたの!!? 信じらんなーい、大人の男が少女にタカるなんて!!」

 リンは大声でそう叫んだ。

「ちょ、違うよ! そうじゃないよ! リンお金持ちだなーって思っただけで!」

「ほんとに~?」

「うん、ホントだよ! リンのお金使うなんてこと、ホントに考えてないよ。でも……」

「でも?」

 カイトはとても遠慮がちに尋ねた。

「アイスはいくらまでなら買っていいんでしょうか…」

 リンはちょっとつま先立って、兄の肩をぽんっと叩いた。

「ホントに好きなやつなんでも買ってやるよ! ただし一個だけな! よし、スーパーに行くからついて来い!」